【伝統花火探求#9】花火を守る活動

「安全に運営を継続するために」

この記事は日本花火鑑賞士会の会員限定で公開されている「伝統花火探求」シリーズを一般の方にも読んでもらおうと考えた特別版です。福岡県久留米市山川町で毎年9月15日に行われる無形民俗文化財の花火動乱蜂(どうらんばち)のご紹介です。2024年にクラウドファンディングの活動をされている事もあり、広く世間の方の知って頂ければとの思いから記事を書かせていただきました。

花火の種類

花火と聞いて目に浮かぶものは、夏の夜にあがる「打ち上げ花火」ではないでしょうか。最近は色鮮やかな花火が音楽に合わせて打ちあがる大会も増えてきました。花火が何万発も打ちあがる大会や、一発の花火玉にどれだけ工夫できるかを競う大会もあります。数十万人が集まる花火大会もあり街のあちこちでお店が満席という景気のいい話もあります。日本では全国各地で花火が行われており知名度があるものだけでも開催数1000回以上。小規模なものも含めると更に多くの花火が楽しまれています。夏だけだと思われている花火ですが、一年を通して花火大会は開催されます。そんな沢山の花火大会の中から今回は花火マニアや花火鑑賞士でも知らない人がいる特別な花火の魅力や実情を少しだけご紹介します。

日本の花火の歴史

日本の花火を初めて見た人はだれかという話は諸説あるそうです。徳川家康は駿府城(静岡市)で鑑賞したという記録があります。また伊達政宗も米沢城で鑑賞したと記録されております。その他にもいくつかの説がありますが、江戸時代までの花火は現在の花火とは全く違うものでした。カラフルな打上花火は無く、黒色火薬のオレンジ色の炎が噴き出す花火が楽しまれたそうです。また花火大会の趣旨も今とは違い「死者の慰霊」「神様への奉納」「悪霊退散」などの願いや祈りを込めて開催されていました。江戸時代以降は戦争や法改正など花火を取り巻く環境も大きく変化し、多くの花火が消滅または形を変えました。花火大会の開催数は多く増加傾向ですが、その一方で昔ながらの祭礼の花火が生で見られる機会は少なくなってきています。

花火動乱蜂


久留米市山川町にある王子若宮八幡宮で367年受け継がれてきた奉納花火のご紹介です。奉納花火というのは、神様のために行われる花火です。王子若宮八幡宮の奉納花火では、動乱蜂(どうらんばち)という個性的な花火を見ることが出来ます。動乱蜂とは竹筒から花火が噴き出す独特の形をしています。これは蜂の巣を刺激され怒り狂ったスズメバチを表しているそうです。音の迫力が名物であり、まるで雷鳴のように感じます。会場が盆地のため爆発音が反響するので花火の音以上に聞こえます。花火動乱蜂保存会の方が作成したサイトには動画もあります。この記事の最後にリンク先を貼っておきますので是非ご覧ください。奉納花火では動乱蜂のほか、水面を泳ぐ金魚花火や、矢が的にあたるように真っすぐ飛んでいく綱火など個性豊かな花火が見られますので直に見に行ける人は来年の9月15日に是非どうぞ。

クラウドファンディングをした理由

久留米市の市役所の方に経緯を伺いました。市の事業である「ふるさと納税」を活用したクラファンに花火動乱蜂保存会の方が応募されたのが始まりだそうです。現在クラファンのサイトに掲載されている写真や記事は保存会の方が用意、作成されたものです。主体的に動いておられるのも保存会の方々だということです。市では採択された事業が上手くいくようお手伝いをする関係だそうで、保存会の方に取り継いでいただくことなりました。役所の方からは是非とも成功してほしいとの思いが伝わってきました。もしかしたら花火が大好きな方だったのかもしれません。

保存会の豊福会長にお話を伺いました。クラウドファンディングというものがあるというのを若手からお聞きになり、チャレンジしてみようと応募したそうです。現在会員の高齢化が進んでおり若手であっても60代だそうです。動乱蜂は竹筒の中に火薬を入れますが、これらは毎年新しく作り直すとのこと。火薬の入った竹筒(蜂の巣)をやぐらに設置するのは重労働であり非常に危険な作業です。それならば道具や足場を揃えて、保存会の会員が安全に作業できるようにしようという経緯があったことを教えて頂きました。

過去の努力よ、未来に繋がれ

花火動乱蜂は王子若宮八幡宮の奉納花火です。クラファンは神様に花火を献上する行為に間接的ではあるが参加することになります。氏子でもなければ久留米市に所縁のない人が関わっても良いのかを動乱蜂保存会の豊福会長に率直に伺いました。

「ありがたいです」

全国の方に動乱蜂のことを知って頂けるだけでありがたいということでした。クラファンでは既に目標金額に達成している事業もあるそうですが、花火動乱蜂の方はまだまだ厳しいとのことです。ですが例え目標金額に届かなくても、来年も必ず花火はやりますと仰ってくださいました。

「ありがとうございます」

神社の奉納花火は儲かる仕組みではなく、準備がとても大変なことなのは重々承知しています。それでも来年もまた花火を続けるという保存会の皆様には頭が下がります。ありがとうございます。
クラウドファンディングをきっかけに素敵な縁を結んでいただき神様にも感謝です。

花火動乱蜂の映像や写真などをご覧になりたい方は下記クラファンのサイトをご覧ください。
歴史ある花火を未来につなげるために、ご支援をよろしくお願いいたします。

「花火動乱蜂」クラウドファンディングの公式サイト